あしたがくるまえに

真剣30代しゃべり場

サヨナラ勝ち

 

熱い熱いすり鉢の真ん中で、高校球児たちが心踊る闘いを繰り広げている。今朝は地元の出場校が強豪校に勝利して、社内のスタッフは仕事はそっちのけで、テレビの前で色めき立った。

「こんなはずではなかったなあ」と思うことが最近よくある。子どものころの想定では、25歳には幸せな結婚をして、28歳になればお母さんになって、今は子育てをしているはずだった。自分が同じところで足踏みばかりしているような残念な大人になっていることなど、つゆ知らず。子どもってマジでいいよね何も知らなくて。

そもそも、28歳という年齢がこんなにも近い将来だなんて考えてもみなかったし、とにかくずっとずっと先のことだとしか思えなかった。情けないことに、今の自分は幼いころに思い描いていた大人の自分とは全く違う。毎日はさほど楽しくなく、誰とでも分けあえる趣味なんてない。やっと彼氏ができたって、その人のことを大好きで大好きでしょうがないわけではなかったり、気がつけば浮気をされて別れたりなんかしている。

ここ何年か「こんなはずではなかった」と思う日々が続いている気がする。何があったでもない、誰に負けたでもないのに、負け犬のような気分。どうやっても過去の自分に勝てない。毎日早起きして走り、好きなことに夢中になり、よく食べ、よく眠り、誰かに恋をしていた、あのころの健やかで明るいわたしはどこかへ行ってしまった。


もがくわたしを追い越すように、ひとり、またひとりと友人が結婚してゆく。妬ましさがゼロかと言えばそうではない。妬みという感情はたしかにわたしの中にある。だけど、わたしは彼女たちの結婚を心から喜んでいるし、幸せを願っている。これも本当だ。だけど、お呼ばれした式が終わった帰り道はどこか寂しさがあり、不安にまみれている。ウエディングドレスを着て微笑む友人が、知らない大人に見える瞬間がある。わたしは2年前にお呼ばれ用に買ったタイトなドレスを1人で着られない。母に背中のファスナーを上げてもらっている。きっと、此の期に及んでまだ大人と子どもの間で宙ぶらりんでいるのだと思う。

いちばんの親友が、この秋に結婚式を挙げる。ドレスは着ずに、振袖を着ようと思っている。

 


「サヨナラ勝ちってあるし。うちらまだ負けてへんし」結婚式の帰りに、酔っ払ったギャルの友人がこう言ったことがある。そのときは、ドラマチックでも何でもない平凡な人生にサヨナラ勝ちなんてないだろ、と思った。きっとない。ちなみに、そのギャルの友人も先月結婚した。鬼盛りのポニーテール、キラキラのティアラ。大きなバックリボンのフワフワとしたウエディングドレスが本当によく似合っていた。彼女らしくて、本当にハッピーな式だった。

彼女の言う通り、悲しいことにまだ試合は終わってない。終わりそうにない。長い長い9回ウラ、ツーアウト。崖っぷちといったところの正直ほぼ負け。まあ、逆転サヨナラとは言わないけど、1点くらい入れたいところだなと思う。