あしたがくるまえに

真剣30代しゃべり場

あの頃

 

 

 

金曜ロードショーで「耳をすませば」を観た。最後に観たのはいつだったか憶えていないけど、そのときより格段に胸を打たれてしまった気がする。

 

人間は、大人になると世界がかなり広がる。
十代の頃にできなかったことが当たり前にできるようになって、やろうと思ってできないことはかなり少なくなる。中高生の頃に描いていた大人なんかメじゃないくらい、大人は楽しい。

毎日好きなものばかり食べても怒られないし、お酒だって飲める。欲しいものは自由に買えるし、好きなものを咎められることなんてない。夜遅く家に帰ってもいいし、休みの日は1日中寝ていたっていい。友達と海外へ旅行にだって行けるし、恋人と泊まりがけでディズニーランドに行ってもいいのです。最高!大人最高!!

でも、何か物足りない。

こんな風に思ったことがある大人は、きっとわたしだけではないはずだ。こんなにも充たされた大人の世界は、何故だか物足りない。

それはきっと、できるようになったことがある分だけ、もう二度とできなくなってしまったこともあるから。そして、大人たちは皆それを知っているからだと思う。

 

この映画に出てくる子どもたちは皆大人びている。現実にこんな中学生はそういないが、やっぱり十代の熱量は凄い。忘れてしまったあの頃の感覚を思い出させながら、恥ずかしくて見ていられないような気持ちにもさせてくれる。恋愛にしても、夢への情熱にしても。若いって本当に無敵だ。

夢にまっしぐらだったり、誰かにどうしようもなく惹かれてしまったりする、あの健やかな気持ちってどんな風だっただろう。金曜の夜からずっと考えている。こんなこと無意味かもしれないけど、立ち止まって過去の自分を振り返ることってそんなに悪くないと思う。

大人にも、いい車で休日の昼下がりにまったりドライブするより、明け方に自転車二人乗りで急な坂登りたい日があってもいいよね。

 

ここから完全に趣味の話だけど、わたしはずっと聖司くん派だった。大抵の女はそうだと思う。
聖司くんは見た目も雰囲気も大人っぽくて、人とはちょっと違う夢を持っていて本当にかっこいい。性格も、一筋縄ではいかない、ちょっと裏をかいてくるタイプだ。魅力的で、なかなかいる男の子じゃない。

だけど、そのスペック故に聖司くんはちょっと危うい気がしてくる。大人になったとき、女タラシ系に傾いても、めちゃくちゃ一途系に傾いても、たぶんどっちでも最悪だ。手に負えない。

そうすると、ここで健康的で真っ直ぐな杉村の良さがグッと出てくる。聖司くんのようになんとなく好意を匂わせながらジワジワ攻めていくタイプではない。小細工ナシだ。
イケメンでもないし、本当に平凡だけど、付き合ったら絶対浮気しないタイプだと思う。聖司くんが雫を訪ねて教室に来た時の杉村の顔は本当にグッとくる。

あと、大人になったとき、杉村みたいなタイプって大概、めちゃくちゃ良くなっている。