あしたがくるまえに

真剣30代しゃべり場

リンキン・パーク

金曜の夕方に、本社にいる音楽好きの上司から唐突に社内アプリでメッセージがあった。

リンキン・パーク復活にビックリしました。しかもかっこいい。」

「え?」

娘が発熱し、リモートワークをしていたので、自宅で慌ててYouTubeを開くと女性ボーカルのライブ映像が目に飛び込んで来た。

 

なんと私は、彼らの復活を知らなかったのだ。上司からのこのメッセージで初めて知った。

毎日朝6時に起き、娘と夫の朝食を用意して身支度をし、8時に娘を登園させ、時短勤務で9時から17時まで勤務。17時半に娘を迎えに行き、18時から夕食を作り食べさせる。19時から入浴させ、20時半までの間は読み聞かせをしたりアニメを見せたりままごとに付き合ったり、その日なりに娘に好きなことをさせ、21時までになんとか寝かしつけに入る。21時半に娘は就寝。21時半以降は私も寝落ちしてしまうか、朝食の下ごしらえをし、起きてなんとか資格の勉強をするか、Instagramで流れてくる、美容系インスタグラマーのリール動画を見ながら少し飲酒し寝落ちしているか、である。朝起きてすぐ顔を洗い、寝起きの自分の顔を見て絶望する。クマがひどい。22時に寝落ちをして6時までぐっすり寝ているとは思えないような青黒い目の下をしている。皮膚のたるみと共に、信じられないほど毛穴が伸びて下がっている。

母になった私は、アイデンティティを見事に失ってしまった。自分でもよくわかっている。自分で言うのは烏滸がましいけれど、私はわりと綺麗な方だったと思う。少なくとも汚くはしていなかった。そして、音楽が大好きで、これだけが趣味で毎日必ず新譜を聴いていた。どんなに忙しくても欠かさなかった。今の私は最近の音楽シーンの話を全く知らない。先日、久しぶりにDJとしてイベントに呼んでもらったのに、娘が発熱し、自分もそれをもらい、直前まで選曲の余裕がなくとにかく数を持って行ってその場で選ぶという最悪の事態だった。しかも、若い子たちを沸かせる手持ちがない。もはや古くてカタい曲に頼るしかない。私の持ち時間は90分あった。昔なら楽しんでやれた。でも、この度はかなり苦しくてしんどい90分だった。店の大事な周年イベントで呼んでくれたのに、ひどいプレイしかできなくて心から申し訳なかった。ダサすぎてその思いを口にも出せなかった。

出演はDJだけじゃなくてアーティストの方もいて、ローカルだけど熱量がすごかった。子どもを持っている人もいた。子どものこと、生まれた時のこと、全部曲にしていた。いい曲で泣きそうになった。何で私は大好きなことに、最愛の日常に阻まれて取り組めなくなったんだろうと思った。

ここへきて、LininParkの復活さえ知らない。私は中3か高1のときに初めてLininParkを聴いた。ずっとガレージやオルタナばかり聴いていたけど、初めてミクスチャーロックを好きだと思ったし、CDを買った。ミクスチャーに興味を持った。チェスターが死んで、多くの人々それぞれの悼みを自分の中でも消化した記憶がある。2017年のフジロックではPUNPEEがwhitestageに立ち『Numb』のサンプリングトラックにリリックをのせてチェスターを悼んでいた。

娘はかわいいし、誰よりも何よりも愛している。

だけど私もアウトプットしなきゃ、と思った。今の自分がつらかった。YouTubeで新ボーカルのnumbを聴いて泣いた。感想は「リンキン・パーク復活に、びっくりしました。しかも、かっこいい。」これでしかなかった。

 

新ボーカルのエミリーが歌っているLininParkは、いろんな意見があると思うけど私は正直全く別物という印象ではなかった。性別が違うし、チェスターとは全く違うけど、でも全くの別物にはなっていなくて(例えば岡村ちゃん宇多田ヒカルをカバーすると岡村ちゃん井上陽水がカバーすると井上陽水になってしまうように)、カバーの様相ではなかったのだ。あの時代の色もちゃんとあって、これが新しいLininParkなんだなと思った。しかも、かっこよかった。

顔のたるみや刻まれていくシワだけを憂うのではなく、ろくに場を盛り上げる、否、持たせることもできないDJの案件を引き受けるのでもなく、母であり、なおかつこういうジレンマを持ちながら自分をどこかでアウトプットしないと前に進めない人間なのだと思う。その上司は、やっぱり君にはどうにかして文章を書く仕事を今後与えたいと思っている、勿体ない、と連絡をくれた。正直嬉しかった。仕事に限らず、書くことに限定するではないけれど、制作でなんとかいい方向にアウトプットがしたい。しなければと思う。いち社会人として・妻として・母として、今ここで今なんとか踏ん張りたいと思っている。

私の現状は、最愛の日常に阻まれたてなったものではなく、それを理由にした怠慢である。